万国博覧会と人間の歴史-アジアを中心に

研究の内容

年度  平成25年度

研究域  第四研究域 文化関係

研究軸  旧交圏Ⅰ

 万国博覧会の時代は終わった、と言われてきた。その歴史の発端に位置づけられる1851年ロンドン万博に始まり、主に20世紀初頭にかけて、列強諸国が産業の進歩を競い、それによって世界を支配する力を誇示し合う――、そこに招請された非西洋の国々や植民地は「異文化」として脚光を浴びる――、そうした、当時他に類例を見なかった国際事業を標準とするなら、たしかに「本来の」万国博覧会は、第二次世界大戦まででその役目を終え、以降は、いまや他に数多あるメガイベントの一つとして、単にその名を引き継ぎ、各国持ち回りでいちおう続けられているということになるのかもしれない。
 しかしながら、近年アジアで連続して開催された万博、とりわけ2010年上海万国博覧会は、万博の意義が低下したどころか、その19世紀以来の歴史をたしかに背負いつつ、世界史の新たなフェーズをつくり、かつ映し出す鏡として、万博という場、万博という機会の執拗なまでの重要性を、あらためて示したと言える。そこにわれわれが見たのは、19世紀西洋の産物を非西洋が追求してきたという文脈における、いわばキャッチアップの完成としての万博開催とは異なるものであった。アジアで初の万博となった1970年大阪万国博覧会を丁寧に参照しながら、同時に、新たなグローバル・パワーとして開催国中国の利益と欲望を明示的に打ち出し、またそれに対して、参加諸国がそれぞれの仕方で呼応してみせた上海万博は、19世紀ナショナリズムの制度を、一度はそれに踏みにじられたアジアが消化し、反動を超えて、21世紀の世界における文明の新しいバランスを唱道する可能性を打ち出したと捉えることができる。
 本研究会は、前年度に実施した1年間の共同研究「万国博覧会とアジア」、その前段となったシンポジウム「万国博覧会とアジア――上海から上海へ、そしてその先へ」での議論のうえに、人間がつくりだしたこの巨大な祭典と、それが人間の進歩を促し、また軋轢を生み、世界の歴史に想像以上に広範な影響を及ぼしてきた様相を、総合的に検討しようとするものである。その目的は、狭義の万国博研究を深めるというよりも、さまざまな角度から人間の歴史を読み解こうとする場合の必須の参照点として、万国博覧会という存在に光を当て直すことであり、多様な視点を持った研究者、実践家との分野横断的、国際的連携によって、これを動かしていきたいと考えている。万国博について、日本で、あくまで日本との関連において初めて集中的に行われた1970~80年代の研究、それを基礎に積み重ねられてきたこれまでの万博研究には見通せなかった論点を積極的に取り上げ、ひいては「日本研究」の相対化という課題をつねに背景に持って進めたい。
(以下の研究組織は2013年8月1日現在のものです)

研究組織

研究代表者 佐野真由子 国際日本文化研究センター・准教授
幹事 井上章一   国際日本文化研究センター・教授
共同研究員 石川敦子 (株)乃村工藝社 経営企画本部広報部・チーフ
市川文彦 関西学院大学経済学部・教授
伊藤奈保子 広島大学大学院文学研究科・准教授
鵜飼敦子 東京大学東洋文化研究所・特任研究員
江原規由 一般財団法人国際貿易投資研究所・研究主幹
川口幸也 立教大学文学部・教授
神田孝治 和歌山大学観光学部・教授
中牧弘允 吹田市立博物館・館長
芳賀 徹 静岡県立美術館・館長
橋爪紳也 大阪府立大学 21世紀科学研究機構・特別教授
林 洋子 京都造形芸術大学芸術学部・准教授
武藤秀太郎 新潟大学人文社会・教育科学系・准教授
稲賀繁美 国際日本文化研究センター・教授
John BREEN 国際日本文化研究センター・教授
劉 建輝   国際日本文化研究センター・教授
瀧井一博 国際日本文化研究センター・教授
朴 美貞 国際日本文化研究センター・機関研究員
Wybe KUITERT 国際日本文化研究センター/ソウル国立大学環境大学院・外国人研究員/准教授
海外共同研究員 青木信夫 天津大学(中華人民共和国)・教授
徐 蘇斌 天津大学(中華人民共和国)・教授
岩田 泰 Economic Research Institute for ASEAN and East Asia(インドネシア)・General Manager

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